奨学金・教育ローンの基礎知識
<ファイナンシャルプランナーへのご相談コーナー>
Q3 奨学金・教育ローンの基礎知識
ひと昔前までは奨学金制度(貸与型)を利用する学生は限られていましたが、最近は大学生の半数以上が国などの奨学金制度を利用しています。
国の奨学金制度は独立行政法人日本学生支援機構が運営しており、無利息の第一種奨学金と、利息付の第二種奨学金があります。第一種の方が貸与条件が厳しく、第二種の方が緩くなっています。
例えば、第一種は成績優秀(5段階評価で平均3.5以上)かつ世帯収入が一定以下(4人家族で前年収入が801万円以下※目安)などの条件がありますが、第二種では成績は「平均水準以上」もしくは「特定分野で一定の優れた資質能力があること」もしくは「学習意欲があり確実に修了できる見込みがあること」の何れかを満たせばよく、世帯収入についても1117万円以下(※目安)としています。
なお、第二種は利息付といっても、法令で上限金利が3%と定められており、実際の金利は固定金利の場合は年利0.89%(平成26年実績)、変動金利の場合は年利0.30%(同)と一般のローン金利に比べて低い金利に抑えられています。また第一種も第二種も、在学中や返還猶予期間中は無利息になります。
奨学金制度を利用する上で注意したい点の一つとして、大学への入学金が必要となる3月には1円も貸与されないことです。後述する一般の教育ローンでつなぐ必要があります。
なお、第一種・第二種奨学金制度とは別に、入学時に最大50万円を一括で借りられる利息付の「入学時特別増額貸与奨学金」制度が用意されていますが、第一種・第二種奨学金と同様に入学後に貸与されます。また「入学時特別増額貸与奨学金」自体は、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を申し込んで断られた人の救済のために用意されているものです。
まとまったお金が必要になる入学金等の準備ができない場合、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」や民間金融機関の教育ローンを早めに申し込み、入学金の振込が必要な時に慌てないよう注意する必要があります。
教育ローンは奨学金制度と異なり、学生の保護者が借りることになります。利息負担は在学中も発生します。ただし奨学金制度とは異なり、学業の成績などでローンが打ち切られることはありません。
奨学金制度を利用する際、最も注意すべき点は、卒業後に始まる返還(返済)の延滞です。支援機構の運営が厳しくなり、3ヶ月以上延滞すると個人信用情報機関に延滞者として登録されてしまいます。一旦登録されると、奨学金を返還している15年や20年といった期間に加えて、全額返還した後も更に5年間延滞者としての記録が残り続けます。
将来、住宅ローンや自動車ローンを借りる際や子どもの教育ローンを借りようとしても、過去の延滞者としての記録が付きまといます。
もし卒業後に就職できなかったり、就職後に失業した場合などは、延滞する前に学生支援機構に相談しましょう。願い出により、毎月の返済額が減額される減額返還(その代わり返還期間は延長される)や返還期限の猶予を受けられる場合があります。
奨学金と教育ローンの違い
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奨学金(日本学生支援機構) |
一般的な教育ローン |
借りる人 |
学生本人が日本学生支援機構から借ります。 |
学生の保護者等が金融機関から借ります。 |
貸与の基準 |
保護者の収入等が一定額以下であることが必要です。また、学生の学業成績等が審査されます。 |
借入をする保護者等の収入が一定額以上であることが必要です。 |
貸与の方法 |
在学期間、毎月定額を貸与します。貸与中は学修状況を確認し、成績不振者には注意喚起や貸与停止等が行なわれます。 |
ローン契約の成立後、約定日に一括で貸し付けます。 |
利息の負担 |
第一種奨学金は無利息、第二種奨学金は、在学中は無利息で卒業後に利息が発生します。 |
貸付と同時に利息が発生します。(在学中も利息が発生します。) |
延滞時 |
3ヶ月以上の延滞により、個人信用情報機関に延滞者として学生本人が登録されます(完済後も5年間記録が残ります)。住宅ローン等を借りられないなどの不利益が生じます。 |
各金融機関の定めによります。一般的に一定の延滞により、個人信用情報機関に保護者等(借りた人)が延滞者として登録されます。学生本人の信用情報については、直接的な不利益は生じません。 |