家計相談「住宅ローンの借り換えでデメリットを防ぐシミュレーション方法を教えてください」
<ファイナンシャルプランナーによる家計相談>
今すぐ「住宅ローンの借り換え計算ツール」(シミュレーション)を使う方はこちら →このページの下段にジャンプします
1.簡単にまとめると・・・
借り換えには数十万円から百万円以上の「借り換え費用」がかかるため、二の足を踏んでしまう方が多いと思います。実際、借り換えメリット・デメリットを見極めるうえで、「金利差メリット」と同じくらい「借り換え費用」が重要になってきます。
なお、
借り換え費用を自己資金で用意できない場合でも、借り換え後の住宅ローンに費用を上乗せして借り換えることが出来ます(金融機関の審査条件によります)。
<借り換えメリット・デメリットの計算>
借り換えメリット = 金利差メリット − 借り換え費用
※上記の借り換えメリットがマイナスになれば、借り換えデメリットになります
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2.ステップ@ まずは金利差メリットの計算
金利差メリットは、@ローン金利(現在のローン金利と借り換え予定先の金利)、Aローン残高、B残りの返済期間の3つの情報で概算値を求めることが出来ます。現在の住宅ローンの完済までの総返済額と、借り換え後の総返済額を比較して、金利差メリットを計算します。
(1)現在の住宅ローンの総返済額を計算
下のローン電卓に現在の「ローン借入額」、「借入金利」、「(残りの)返済年数」を入力して、「借り換え前の総返済額」がいくらになるかを計算してメモしてください。
(2)借り換え後の住宅ローンの総返済額を計算
次に「借入金利」について、借り換え予定先の金利で入力しなおし、「借換後」の総返済額がいくらになるかを計算してメモしてください。尚、借り換え後の返済年数を今より延長する場合、審査において理由を尋ねられたり、審査をパスしない場合がありますので注意が必要です。
(3)金利差メリットを計算
上記@とAの差額が金利差によるメリット見込額になります。
金利差メリット(見込) = @借換前の総返済額 − A借換後の総返済額
※パソコン・スマホのブラウザ設定で「Java Script」が無効(OFF)の場合、本ツールはご利用できません。
<注意事項>
※各項目の指定条件に基づく「元利均等返済」の概算結果を表示します。
※実際の返済額は借入先金融機関の計算に基づく金額となります。必ず借入先にご確認ください。
※当社ホームページの免責事項が適用されます。いかなる損害責任について応じかねます。
「住宅ローン電卓」の詳しい使い方や返済比率等の審査基準については
「住宅ローン電卓〜いくらまで借りられる?」のコーナーをご覧ください。
<コラム>ちょっと難しい金利の比較
例えば借り換え前の金利が「10年固定」で、借り換え後の金利が「2年固定」の場合、そのまま比較してしまうと、正確な比較とはいえません。考え方として、今の金利タイプと同じタイプ(固定年数等)の金利同士で比較すると、借り換えメリットをより適切に推定することができます。もちろん借り換え後の金利タイプは自由に選べますが、もともと金利水準の高い「長期」の固定金利タイプを、金利水準の低い「短期(または変動)」の金利タイプに借り換えた場合、目先では借り換えメリットが大きくなりますが、将来の金利上昇局面でデメリットが生じる可能性があります。逆に「短期」の金利タイプを「長期」の固定金利に借り換えた場合、目先の借り換えメリットは小さくなりますが、将来の金利上昇局面ではメリットが大きくなる可能性があります。なお、将来の金利水準が今よりも更に低下した場合、「短期(または変動)」のほうがメリットは大きくなります。
この試算はあくまでも現在の適用金利が将来も続いた場合の試算結果となりますので、同じ金利タイプ同士で比較しておくと、選択した金利タイプによる認識の相違やギャップを防ぐことができます。
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3.ステップA つぎに借り換え費用を計算
借り換えに必要になるコスト(費用)を概算します。
下の「5.ご相談事例」のコーナーで詳しく解説していますが、事例にあるように借換先の金融機関によって借り換え費用は大きく異なります。また、保証会社の保証料はローンの「借入額」と「借入期間」によっても大きく異なります。そのため、概算と言えども計算は複雑です。
借り換え費用の概算ツールは後述の「都市銀行M(例1)」と「ネット銀行S(例2)」のケーススタディに基づいて、借り換えに必要な主な費用を概算(推定)するものです。実際の借り換え費用は、金融機関や司法書士事務所、担保不動産の状況等によって大きく異なりますのでご留意ください。なお、例2のネット銀行Sは、保証料が必要ないため、借り換え費用が少なく計算されます。
都市銀行の借り換え費用の概算ツール(例1)
例1の都市銀行Mの場合の概算ツールです。実際の借り換え費用は、借り換え予定先の金融機関に見積もりを依頼してください。諸条件により借換費用は大きく異なる可能性があります。
▼ローン元本金額、借入期間を指定すると、借換え費用をシミュレーションします
(計算例) 借入額2800万円、残りの借入期間25年 → 約105万円
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ネット銀行の借り換え費用の概算ツール(例2)
例2のネット銀行Sの場合の概算ツールです。実際の借り換え費用は、借り換え予定先の金融機関に見積もりを依頼してください。諸条件により借換費用は大きく異なる可能性があります。
▼ローン元本金額を指定すると、借換え費用をシミュレーションします
(計算例) 借入額2800万円、(借入期間は関係なし) → 約27万円
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※上記の借り換え費用の概算ツールは例1、例2ともに現在または将来における借り換え費用を保証するものではなく、本資料作成時点でのケーススタディに過ぎません。実際の借り換え費用の見積もりは、専門家の有償サービスもしくは借入予定先の金融機関等にご依頼ください。実際に発生する借り換え費用全額がお客さまの負担となります。
4.ステップB 最後にメリット・デメリットを判定
ステップ@で計算した「金利差メリット」からステップAの「借り換え費用」を引き算した残額が最終的な借り換えメリットとなります。もし残額がマイナスであれば、借り換えデメリットとなります。
借換メリット = 金利差メリット(ステップ@) − 借り換え費用(ステップA)
なお、借換費用は上記の例2(ネット銀行S)のように、保証会社保証料の不要な銀行もあります。その場合、事務手数料+抵当権登記費用+ローン契約書印紙代が主な借り換え費用となり、負担が大幅に改善します。逆に金融機関によっては、事務手数料等が極端に大きいケースなどもありますのでご注意ください。
<「借換費用」を借換後のローンに加算して借りた場合のメリット計算の方法>
借換え費用は数十万円以上も必要になり、その費用を捻出すること自体に躊躇しがちです。その場合、借換え費用を借換後のローンに加算してを組むことが出来ます(ただし、金融機関のローン商品や審査基準によります)。
借換え費用を加算して借りる場合の借り換えメリットは、「現在の住宅ローン残高」+「借り換え費用」を借換後の住宅ローン元本として計算ツールに入力し、将来の「総返済額(見込)」を計算します。そして、ステップ@の(1)で計算した「現在の住宅ローンの総返済額(見込)」と比較します。なお、下の計算式の通り、引き算の結果から借換費用を別途マイナスする必要ありません。
借換メリット(マイナスはデメリット) = 下記A −下記 B
A: 現在の住宅ローンの総返済額(ステップ@)
B: 「現在の住宅ローン残高+借り換え費用(ステップA)」を借換後の住宅ローン元本として、
借換後の金利で計算した総返済額
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住宅ローンは専門的で分かりにくいため、メリット・デメリットの最終的な判定は専門家にご相談ください。また、実際に借り換えを検討する場合は、借換予定先の銀行担当者に借り換え前の条件との比較を依頼し、完済までメリットが持続しうるかご確認ください。
5.ご相談事例
住宅ローンの借り換えのメリット・デメリットの見極め方を教えてください
今回ご相談にお見えになったのは、ご家族4人で東京近郊の分譲マンションに暮らす健太さん(39)。10年前に銀行から借りた住宅ローンの借り換えを検討しているものの、「勤務先の同僚から住宅ローンの借り換え費用が軽自動車1台分くらいになり、メリット・デメリットが分からなくなった」と聞いたことがあり、健太さん自身も「何年も借り換えの二の足を踏んでいる状況」とのこと。
実際のご相談では当社FPが借り換えのメリット、デメリットをきっちり計算して具体的にシミュレーションしますが、このコーナーでは、お問い合わせの多い住宅ローンの借り換えについて、その見極め方や考え方を分かりやすく解説します。
<ご相談者の住宅ローン>
残高2800万円、金利2.6%(10年固定金利でまもなく切り換え時期)、借入期間35年(残り25年)

FPのご回答
<まずは金利差メリットを計算>
金利差メリットは、@ローン金利(現在のローン金利と借り換え予定先の金利)、Aローン残高、B残りの返済期間で計算することが出来ます。詳しくは
上記の解説をご覧ください。
なお、ご相談者の健太さんの場合、シミュレーションの結果、住宅ローンの金利差メリットは約301万円が推定されました。
<もっと詳しく・・・>
@ 「ローン金利」の調べ方
「返済予定表」で「現在のローン金利」を確認できます。もし返済予定表が手元に見当たらなければ、銀行に問い合わせれば返済予定表を再発行してもらえます(再発行を依頼する場合、手数料が必要なケースもあり、あらかじめ金利等の必要項目の記載があるか、銀行にご確認ください)。
「借り換え先のローン金利」はインターネットの金利比較サイト等で見ることができます。優遇金利等を適用したレートは各銀行の住宅ローンのページをご参照ください。
A 「ローン残高」の調べ方
ローン残高も「返済予定表」で直近の残高を確認できます。銀行の返済予定表によっては、毎月返済分とボーナス返済分の記載が分かれている場合がありますので、毎月返済分とボーナス返済分の「合計」金額を万円単位で確認してください。
B 残りの「返済期間」
返済期間についても「返済予定表」で確認できます。最終返済予定の年月日から、残りの返済年数を求めてください。当社FPが計算する場合、厳密に月単位で計算しますが、このコーナーではあくまでも概算ベースの計算ですので、「年」単位に丸めてください(例えば、6ヶ月に満たない端数の月数は切り捨て、6ヶ月以上は切り上げるなど)。
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<次に借換費用を比べる>
借り換え費用は金融機関によって費用体系が異なりますが、一般的には@保証会社保証料、A事務手数料、B抵当権登記費用、Cローン契約書印紙代、D団体信用生命保険料などが必要になります。申し上げるまでもなく、合計の借換費用を1万円でも少なく抑えることができると、同じ金利差であっても借り換えメリットは大きくなります。
一般的にメガバンクなどの都市銀行系は「@保証会社保証料」の費用負担が大きく、一方、ネット銀行系は「A事務手数料」の負担が大きくなる傾向があります。いずれにしても、この「@保証会社保証料」+「A事務手数料」が安いほど、借り換えメリットを享受しやすいといえます。
なお、「B抵当権登記費用」とは、自宅(担保不動産)に銀行(保証会社)の抵当権を登記するための税金、司法書士手数料となります。銀行指定の司法書士が法務局で手続きすることが一般的で、費用については銀行を通して司法書士の見積もりを出してもらい、極端に高すぎないか確認しておけば安心です。「Cローン契約書印紙代」は印紙税法で定められた税額で、ローン元本が1000万円超5000万円以下なら印紙税は2万円と定められています。なお、「D団体信用生命保険料」は無料(銀行が負担)としている金融機関が一般的ですが、一部ではオプション制を敷いている場合もあります。
ちなみに、ネット系のソニー銀行などは、保証会社保証料がゼロで事務手数料も数万円と、借り換え費用の負担の少ない金融機関もあります。
◆借換費用の例1: 都市銀行M
今回のご相談ケースでは、都市銀行Mの場合、借り換え費用として合計105万円が必要になります。このうち、抵当権登記費用と印紙代は前述の通り税金部分と司法書士手数料であり、どの金融機関を利用しても概ね同等の費用負担が発生します(※この司法書士手数料の安い事務所を選びたいところですが、印鑑証明書や権利証等の重要書類を預託する相手でもあり、銀行の指定する司法書士事務所を利用することが一般的です)。下表のとおり、都市銀行Mの場合、保証会社保証料は77万円も必要です。
都市銀行Mの借換費用
◆借換費用の例2: ネット銀行S
ネット銀行Sの場合、借り換え費用として合計27万円が必要になります。都市銀行Mと比べて借換費用は大幅に安くなります。保証会社保証料が0円であることが大きな理由です。
そもそも保証会社保証料とは?
保証会社保証料は、銀行の子会社などの保証会社に債務保証を委託するための費用となりますが、そもそもローンを借りる人の立場で見れば、万一支払いが滞った場合に銀行本体が担保不動産を差し押さえるのか、保証会社が差し押さえるかの違いでしかなく、保証料は金利負担と並ぶ大きな負担でしかありません。なお、このS銀行は該当しませんが、ネット銀行の場合、事務手数料がやたら高額なケースがあり、注意が必要です。
ネット銀行Sの借換費用
<借り換えメリットはいくら?>
ご相談者のケースでは上記で紹介した借換費用の安いネット銀行Sの金利を第一候補として検討しました。
ネット銀行Sでは、10年固定金利を選択すれば年1.174%(※)、変動金利を選択すれば年0.889%(※)の金利となりますが、ご相談者さまの希望で今後10年間は10年固定金利を選択し、その後は変動金利に移行する前提で比較計算をしています。なお、比較対照となる借換前銀行の10年固定金利は年2.3%、変動金利は年1.075%(※)となる前提です。
試算の結果、概算ベースの借り換えメリットは約273万円(純粋な金利差メリットは約301万円)が見込まれます。現在の銀行で支払いを続けた場合の今後の総返済額は3496万円、借り換えた場合の総返済額は3222万円となる見込みです(借換後の総返済額には借換費用の27万円を含めた金額です)。
金利差メリット(約301万円) − 借り換え費用(約27万円) = 借換メリット(約273万円)
(※)いずれの金利も相談時の適用レート。試算に当たり、借り換え前後の金融機関が適用する金利差が固定金利・変動金利のそれぞれの期間において継続することを前提としています。当ページの計算ツールでは返済期間中、同じ金利が適用される前提で計算されます。途中から金利が変動する場合の計算は当社FPのご相談サービスをお申込みください。
総返済額の比較(借換前→借換後) 差し引き273万円も圧縮
<そのほかの借り換えメリットとは?>
借り換えを機に「三大疾病保障」付の住宅ローンなどに借り換えることで、別途加入している生命保険を見直す契機となり、家計のスリム化と保障内容の充実を図ることができる場合もあります。
支払利息額(累計金額)の比較
6.デメリットにご用心
<主な注意点>
・現在の住宅ローンが固定金利型の場合、借り換えにより一括返済する際、固定金利解約手数料等が生じる場合があります。金融市場の環境等によっては大きな費用となる場合があります。あらかじめ、ローン契約書類を確認いただくか、借入先の金融機関に問い合わせください。
・借り換え先の金融機関では、年収状況や担保不動産、個人信用情報等に基づき審査するため、借り換え先の審査結果が確実になってから借換前の金融機関に一括返済について連絡すると安心です。
・住宅ローン控除の適用を受けている場合、借換後も引き続き適用をうける上で@借換後の新しい住宅ローンが当初の住宅ローンの借り換えのためであることが明らかなこと(住宅ローン控除の要件を満たしていること)、A借換後の住宅ローンの借入期間が10年以上であることなど、適用を受けるための条件がありますので注意が必要です。なお、既に住宅ローン控除を5年受けていれば、借換後の控除期間は残りの5年となります。また、借換え費用部分のローンは住宅ローン控除の対象にはなりません。
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